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日々の破片

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2023-07-26

_ ラインの黄金

映像で2人の胎児が血を流すほどの喧嘩をしている。

なんとなくジークフリートとハーゲンを双子として(3世代目と2世代目という違いはあるが、僕には彼らは双子に見える)扱っているのかなあとみている。

ぼわーっとした音が沸き上がってくるので、なるほどこれがオーケストラを舞台に埋め込んだことによる音響効果なのかと思う。後で、リピーターの人から、インキネンの音作りがへたでぼわーとしていたというので、それは指揮っぷりによるものだったらしい。

ただ、とにかく、どれだけオーケストラが鳴っていても常に歌が聴こえるので、それこそ部隊の下に押し込めて一度舞台裏で反響させるという効果によるものなのは間違いなさそうだ。

あと、客席の下ががらんどうということで、ライブ映像の拍手とともに沸き上がるドンドコドンドコの足踏み音が、なるほど、この客席ならではの音響効果なのかということも得心した。

あとでプログラムを読んでいたら、ヴァレンティンシュヴァルツのリングのナラティブという章で、アルベリッヒとヴォータンを双子として解釈していることがわかった。

ただ、世界を征服できる指輪を持ってはいるものの奸計にはまり指輪(少なくともその権威)を失い無力化されるという筋立てにおいては、ラインの黄金のアルベリッヒと神々の黄昏のジークフリートはまったく相似構造だ。唯一の違いは自ら愛を捨てたアルベリッヒに対して、ジークフリートは奸計により愛を失くしたとはいえ、ブリュンヒルデが存在するという点で、結果として神々の滅亡とリングの昇華は行われる。

神々はゴッドファーザーのヴォータンを中心としたファミリーとして描かれている。

歌手では圧倒的にドンナーのライムントノルテ(と読むのかは知らん)が素晴らしく、まさに鬱々とした空気を一変させるだけの気持ちの良い歌いっぷりで実に爽快。あまりに爽快なのでそのあとの虹の橋の印象がまったくない。(雷の音がピンッみたいな妙な音なのは一体何を象徴させたのだろう?)

ドイツに来てから何度も雨に降られたが、それが雷がゴロゴロ鳴ってしばらくするとまさに驟雨という降りっぷりが10分くらいで上がり、すると湿度が低いからか実に爽やかになる。

ああ、ヴォータンが気分を一新したいからお前が雷を鳴らして一雨降らせろというのは、この気候だからか、とえらく納得した。


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