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日々の破片

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2023-07-31

_ 神々の黄昏

ブリュンヒルデが子供を眠らせて引っ込むとノルンが登場。仮面をかぶった人間が途中登場してくるが誰だろう?アルベリヒっぽいが。

インキネンの指揮はテンポが遅い。1幕が2時間に設定してある。

が、どうもそのテンポによって個々の歌手の動作がはっきりわかり、(すでにリングのオリジナルの物語とは全然異なる世界線を進んでいる)この世界の人間関係が浮き彫りになる。指揮者-演出家-歌手の間で相当緻密なやり取りをしたのではなかろうか。

ジークフリートは何かお楽しみが待ち構えているに違いない出張を前にうきうきと荷造りをしている。

置いて行かれるブリュンヒルデは嬉しくなく言い争いとなる。

が、ジークフリートは旅路の必然性を力説する。

ジークフリートのモチーフがここぞとばかりに鳴り響く箇所は抜群だ。

ブリュンヒルデは折れて、お目付け役としてグラーネを連れて行くことを求める。ジークフリートは最初拒否するが、結局受け入れざるを得ない。

ブリュンヒルデは別離の抱擁をするがジークフリートはすごく嫌そうに身を引く。

ブリュンヒルデは子供を抱きしめる。

グンターは売れっ子のデザイナーのようだ。ハーゲン、グートルーネと仲良くサファリの写真が飾ってある。昨年の中継でも妙に覚えている。が、今回舞台で見た方が演出は鮮明で、ブーの嵐をどう解消するかいろいろ変えたのだろう。

ハーゲンとグンターのやり取り(お前は良い男だが相手がいないのが問題だ。そこでブリュンヒルデだよ。恐れを知らない男だけが得られる。そりゃ無理っしょのやり取り)が実に軽妙。グンターがうまい(ミヒャエルクファーラデッキー)。

が、すさまじいのはハーゲンのミカカレスで、ハイホーにはぶっ飛ぶことになる。

ジークフリートは呼ばれてさっそくグートルーネにグッとくる(このグートルーネはギュンターではなくハーゲンとの関係が怪しい)。お目付け役のグラーネに緑の忘れ薬を頭からかける(つまり、ジークフリート本人は飲まない)。もうブリュンヒルデとの結婚生活は破綻しているのだった。

グラーネは闇に葬られる運命が決まる。

ブリュンヒルデ(キャテリーンフォスターって読むんじゃないよな)は素晴らしい。子供を捨てろと諭すヴァルトラウテ(クリスタメイヤー)を追い払う。

2幕のハーゲンのハイホーが凄まじい。指輪を高々と掲げると闇の軍勢が参集する。凄まじい合唱。なるほどギュビッヒは地方豪族ではないから領民や一族の代わりにジークフリートのジークフリートからもらった指輪がここで役に立つのか(そういえば同じく黄色いポロシャツを着ている)。

ここのシーンの音と演技だけでもバイロイトまで観に来た甲斐があった。

暢気にハイホーハーゲンとジークフリート登場。このハイホーハーゲンのばかみたいな明るい響きがとんでもなく素敵だ(直前の闇の軍勢との対比のおもしろさ)。シャーガーは実に良いジークフリートだ。この流れは最高だった。

誘拐してきた子供(誘拐したときはグンターに変装しているからともかく今は元の父親たるジークフリートになっているわけで、一体、どういう風にこの子供の目に世界は映っているのだろうか?)と仲良く魚釣りをしていると真っ赤な服のラインの乙女登場。

ここでの本来のやり取り、良い男なんだから指輪を頂戴、そうはいかないよ、とはいうもののあげても良いかな|ちゃんと言わなきゃだめよ、呪われるぞ、ざけんじゃないと演技(演出)が頭の中でうまく結びつかなかった。

いずれにしてもハーゲンが下りてきてジークフリートの背中を刺す。子供はハーゲンに抱かれる。ドンドン、葬送行進曲。

ブリュンヒルデの自己犠牲。この歌は凄まじい。が抜群ではなかろうか。グラーネの首が投げ込まれたらしいが気づかなかった。ブリュンヒルデはガソリンを頭から被る。子供たちはラインの乙女たちに抱きかかえられているが、乙女たちは倒れる(なぜ?)。子供はどこかへ逃げ出す。リングのサイクルがリングが抜け出したのだ。新しい世界が始まる。

天が落ちるとヴォータンが首を吊って死ぬ(ジークフリートではジークフリートに撃ち殺されたわけだし、まあどうでも良いがファミリーは解体である)。ラインの黄金冒頭のアルベリヒとヴォータンの双子の胎児の映像。

すさまじい拍手。ハーゲンが出てきたところで全客席がスタンディングオベーション。いや、そりゃそうだろう。

演出陣の登場では当然ブーの嵐だが、今回の指揮と歌手では演出意図が見やすいからだと思うが、ブー2に対してブラボー1くらいにまで賛成派が増えていた(去年のビデオではブー一色だった)。

それにしても実に良いものを観た。


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