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日々の破片

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2024-03-09

_ カルメン

東劇でメトライブビューイングのカルメン。

カルメンはアイグル・アクメトチナで27歳、むちゃくちゃ若い(とはいえ物語上のカルメンは例によって16歳くらいなのだろうが)が、幕間インタビューで正式なカルメンデビューはロイヤルで21歳のときというから、ちょっと普通ではない。(実際、抜群にうまい)

プロダクションが、DV男と自由な女といういわゆるフェミニズム解釈の演出なのだが(演出家インタビューでもそれっぽいことを言っている)、これまた悪くない。

軍需産業の工場、そこを監視する米軍、メキシコとの国境を超える密輸団(当然、物は麻薬だろう)、エスカミーリョはロデオの英雄と読み替えているが、子供も言っていたが、たばこ工場の前の広場を工場の入り口に置き換えたせいで、1幕は動きがなくてそれほどおもしろくもない(=良い演出とは思えない)のだが、その後は抜群となった。とてもおもしろい。

帰営ラッパが鳴り響くところでのカルメンの茶化しっぷりがとんでもない。

それにしてもスニガは無事に帰還できるのだろうか?

エンジェル・ブルーのミカエラ(ブルーの服)も良いのだが、ベチャワのドンホセがこれが初ロールとは信じがたい。ベチャワは只者ではない。

ホセに振り払われて倒れたカルメンを助け起こそうと駆け寄るミカエラ。

幕間インタビューでエスカミーリョ(ケテルセン)が、演出と舞台設定は違うけど、エスカミーリョはエスカミーリョだから全然OKみたいなことを言っていたが、エスカミーリョは確かにエスカミーリョだった。8秒ロデオマシンに乗るらしいが、映像上は出もしなかった。

そして最後の最後、本来であれば刺し殺すつもりでドスを懐に入れたホセがカルメンの前に立ちふさがるところを、手ぶらのベチャワが真情あふるる後悔の念で寄りを戻そうと歌いまくるのを、カルメンにきっぱり断られて追い払われそうになったところを激高して殴り殺すというとんでもなく真に迫った演出で戦慄した。様式美ではない。とんでもない衝撃だ。

指揮のルスティオーニは、いきなり振り始めて凄い速度で突き進む(が、花の歌などではテンポを落として歌わせまくったり、緩急自在)。好きなタイプだ。

とても良いカルメンだったというか、今まで観てきたカルメンの中で最高峰ではなかろうか(演出がとにかく光る)。


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